バレエ治療

アンデオール

アンデオールとは脚を外側に開く(外旋)させることですが、まず股関節の形状を知る事が大切ですので、簡単股関節講座!

股関節は臼状関節という、お椀にボールが入ったような形状をしています。
肩の関節(球関節)に似てますが、それよりも深い形を形成しています。

股関節は骨盤から上半身の重さを左右の股関節だけで受け止めてますので、かなりの負担がかかりますし、お椀からボールが抜けないように、腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、座骨大腿靭帯、大腿骨頭靭帯(大腿骨頭に栄養を送る)という強靭な靭帯や股関節周囲筋によって補強されてます。

アンデオールはお椀からボールをクルッと外に回す訳ですが、この外に回す筋肉は、お尻の下部にある、梨状筋、上双子筋。
下双子筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、大腿方形筋などの(外旋筋)、これらの筋肉を収縮(肛門や尾骨が締まるような感覚)させる事により太ももを外に外旋させる事ができます。
(この時に大切なのは、太ももが外に開くというよりも内股が前に開くというイメージが大切です)

バレエの場合はどんな動きでも、これらの外旋筋をゆるめる事はないです!

更に、脚というのは股関節から下が脚と思う方が多いと思いますが、実は皆さんが良く聞く腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)これも脚の筋肉というイメージを持つとよいです。

腸腰筋は大腰筋と腸骨筋を合わせて腸腰筋と言いますが、この大腰筋は腰椎(腰の骨5つ)の側面のから発生して腸骨筋と合流して鼡径靭帯の下を通り大腿骨内側(小転子)に付着していますので、この腸腰筋をちょっとだけキュッと締めてあげると内ももが前に出やすく、同時に腰の後ろ(背筋類)もキュッと締めてあげると腰からお尻も締まり、アンデオールしやすくなります。
(もちろん上半身の引き上げは大前提です)本来、腸腰筋はバットマンやパッセなどで脚を挙げたり、姿勢を維持するのに重要な働きをします。

ですので脚というのは大腰筋の起始部である腰椎の1番(みぞおち辺り)から脚というイメージを持つと、脚がとても長く見えますので、是非そんな感覚を持ってレッスンをしてみてください。

この時に重要なのが、みぞおちからイメージすると、みぞおちが開きやすいので、みぞおちにボタンを締めるように軽く閉じてください。
そして下腹部と腰の後ろとお尻の下(イスに座ると当たる骨の辺り)のボタンを締めることにより、骨盤が立ち、内ももが前に広がり、理想のアンデオールが可能になります。

☆注意!股関節の解剖学的形状は人それぞれです。
特に大人になってからバレエを始めた方は、股関節が前に向いている方もいますので、人と比べるのではなく、自分の最大可動域を目指すことが重要です。
ストレッチをして、股関節周囲筋や靭帯をゆるめて、硬直している太ももの筋肉をゆるめながらレッスンをするとゴールは近くなります。
自分の解剖学形状よりも無理にオープンすることは、必ず股関節や膝などを痛めることになりますので、自分を最大限美しく魅せれるポジションを目指してください!

股関節が痛い

アンデオールで説明したとおり、股関節はお椀にボールが入ったような(臼状関節)形状で関節のクッションの役割をする関節軟骨とそれを補強する関節唇(ひさしのようなもの)や関節包などで関節は成り立っております。

その中でも、どのような動きで痛めたか?どの部位が痛いか?どんな動きをすると痛いか?など検査、診断をして治療を進めることが重要です。

初心者の場合は自分の股関節の形状以上に、関節を回す事により筋肉、靭帯を痛めることが多いですし、上級者の場合は使い過ぎ(摩耗)により筋肉、靭帯、ひどいと関節内までも痛める方もいます。

股関節の隙間(関節間隙)をキープして踊れるとよいのですが、レッスンや舞台となると、どうしても無理な状況に遭遇しますので、上半身の引き上げができないままジャンプして着地したり、ターン系を繰り返すことにより、関節を痛めてしまいます。

関節が擦れて使い続けることにより、軟骨や関節唇を痛めたり、新たな骨の出っ張りができたり、最悪は変形したりする方もいます。

僕も左の股関節の関節唇付近に新たな軟骨が飛び出して、膝を抱えるようにすると、骨に当たり鼡径部に痛みを発生してINに入らなく、和式のトイレに入れない時もありましたが、周囲の筋肉や靭帯をゆるめて、関節を強化するトレーニングをおこない、関節可動域を少しでもフリーな状態にしてあげると、少しずつINに入りやすくなりました。

予防としては、自分の解剖学的形状を理解した上で、関節可動域を拡げていくストレッチ&ケアーをおこなうことと、関節の負担を少なくする為に、上半身の引き上げを常に保つこと(特に着地やプリエで下に降りた時は特に)が重要です。

新体操の選手もあれだけの可動域を酷使して演技をしていますので、股関節を痛める選手も多く、特に引退してからは、股関節に水が溜まったり、ジッとしててもズキズキと痛みを伴い、悩んでる方が多いです。

関節は消耗品と考えてください!常によい筋肉のコンディションをキープすることで少しでも長く快適に使うことができますので、日頃のケアーを怠らないでください。

グランバットマンが低い

グランバットマンを高く挙げるようにするには、何と言っても柔軟性と筋力が必要になります。

柔軟性のないままバットマンを一生懸命挙げていても、太ももの筋肉ばかり使ってしまい脚が太くなるばかりか、軸もブレてしまいます。

軸がブレると当然ピルエットも上手く回ることができません。

脚を挙げる時は太ももの前とお腹に意識がいきがちですが、実は、お尻からハムストリングを使い脚を押し挙げられる感覚が大切です。

柔軟性を向上させて、自分の柔軟性に合った高さで段階的にトレーニングをして、軸の強さと、脚を挙げる為の筋力をシッカリ作ることが重要です。
(補助をしながトレーニングをすると効率よく柔軟性と筋力が付きます)
グランバットマンを挙げる為には、ハムストリング、お尻、腰、太もも、お腹、胸、(ほとんどですが!)の柔軟性が必要になります。

皆さんハムストリングだけを一生懸命ストレッチする方がいますが、実はハムストリングをシッカリ使う為には、太ももがちゃんと収縮しなければ、ハムストリングは伸びてくれません!筋肉を収縮させるのも柔軟性が必要なのです!

また筋膜で言えば、頭からつま先まで複雑につながり合っています。

仰向けで脚を持ってハムストリングのストレッチをするとき、身体の硬い人は首の後ろがつまりアゴが挙ってしまいますが、この現象はハムストリング~腰などで筋膜が引っ張られ後頭部が引き寄せられる現象によるものです。
このような時は脚を持ったまま、背中を丸めて頭を浮かせてアゴを引き、へそを見るような姿勢で30秒ほどキープしてから頭をゆっくり床に落としてください。
筋膜がストレッチされてアゴが挙らなくなります。

これらの条件が整い、床を足の母子球辺りで踏んだエネルギーが膝の内側~腸腰筋の停止部(小転子)~みぞおち~首の付け根(背中側)~頭の頂点(百会)に抜けるような強い軸が作れてこそバットマンは高く挙ります。

一方脚を挙げる側の筋力というのは、腸腰筋、腹筋、縫工筋、(その他大腿部の筋力も多少)などの筋力が必要になりますが、柔軟性が向上すれば、それほど強い筋力は必要ありません!特にバレエで使う筋肉の使い方はアイソメトリック運動(筋肉を縮めない、長さを変えないで筋肉を収縮させる)ですので、これがシッカリできれば細く長い綺麗な筋肉ができあがります!

フロアートレーニングで抵抗などを加えながらトレーニングすることにより、効率よく柔軟性や筋力アップができ、バーレッスンやセンターで動いた時には違いがわかると思います。

これまでのバレエはレッスンだけで全てを作り上げてきましたが、効率よく柔軟性、筋力、筋肉の使い方をマスターする為のトレーニングもできるのです。
このようなパーソナルトレーニングとレッスンと併せて行うことにより、ケガなく最短でゴールに到達できます。

正しい姿勢がわかりません

閉じた傘を想像してください。

センターの骨だけがまっすぐ強く折れることなく伸びて、その骨に周りがぶら下がっています。

まさに軸は、この傘の骨であり、その軸に筋肉がぶら下がっているのです。

この大切な軸ですが、1番ポジションでいうと足の裏(つま先側三分の一、母子球あたり)で床を踏み→膝の内側→太もも内側(小転子)→お尻(座骨結節をキュッと閉じ、肛門に何か挟む、尾骨が締まる感じ)→みぞおち(みぞおちをキュッと締め)→首の付け根(ハンガーの頂点)→頭頂部(百会)を突き抜けてエネルギーを天に放出するような一本の軸が横から見ると一直線上に並んでるのが理想です(脚のポジションによっては骨盤から下は三角になったりしますが)

☆ 身体の前側を締めて、背中のラインで立っている感覚が必要です。
背中で踊れるダンサーは美しいです。

もちろん人間は生理的湾曲と言って、脊柱はS字を描いていますので厳密には一直線はありえませんが、それに近づけることが大切です。

アイススケートのターンでも、この軸を細く締めることができないと、3回転、4回転は回れません!
ヨガでは7つのチャクラがありますが、このチャクラも軸のようなもので、エネルギーの流れとしてはとても重要です。

当院にはバレエダンサーが多く来院しますが、基礎をシッカリ積んでいるダンサーは2~3時間かけて余計な筋肉の緊張を取ってあげるだけで、驚く程、動きが滑らかになります。
「骨で立っているよう!」と口を揃えて言います。

立ち方や姿勢というのは、このような感覚をつかむことが大切ですが、周りの筋肉の余計な緊張や疲労があると、軸を感じる前に周囲の筋肉が反応してしまい、軸をイメージすることができません。

よいパフォーマンスをする為にも、日頃のケアーでコンディションをキープすることはダンサーの使命だと思います。

引き上げの正しい感覚

引き上げの感覚は、正しい姿勢とまったく同じことです。

正しい姿勢をキープして頭頂部からエネルギーを放出し、周囲の筋肉はそれにぶら下がってる感覚が大切です。

この時に、自分の身体は足から頭までをイメージするのではなく、足の裏から床を突き抜けてまだまだ足はあり、頭は天まで突き抜けてるイメージを持つと、更に線が長く見えます。
(このイメージを強く持つと肩も一緒に挙りやすいので注意!)そして呼吸がスーッと通ることも大切です。

器械体操でもよくするのですが、軸を作る、筋肉を内側に締めていくトレーニングをすると、感覚をつかみやすいです。

効果的な甲出し方

甲出しはとても時間がかかります。
特に大人になってからは毎日毎日ストレッチをしなければなりません。

1 まずは床に座り、片足をももの上に乗せてスネ、ふくらはぎ、脚の裏、脚の甲をマッサージでほぐす。

2 つま先を手でつかみ、足首を回したり、ポイントにして更に指を曲げたりする。

3 イスに座ってポイントにした状態で床を使い、甲を押し出してやります。
親指側から小指側まで(ターンアウトから内股まで)体重を掛けずに行ってください。
指がいたければクッションを引いて行うとよいです。

4 台所の流しにつかまり、手で身体を支えながら片足ずつ膝を伸ばした状態でポイントで甲を押し出します(体重が掛かり過ぎないように要注意!)

ポイントのまま、今度は膝を曲げたりします(マイケルジャクソンのポーズ)

脚の関節や筋肉は細かく壊れやすいので、無理しない程度に気長に毎日行うことが重要です。

☆ストレッチ系はマックスまでやるよりも、その手前でキープする(痛気持ちいい~!)くらいの方が、結果的にゴールは近いです。

トゥシューズを履くのに必要な筋肉

トゥシューズを履く為には、これまで説明した、立ち方、引き上げ方、軸、が作れているが大前提ですが、何と言っても足首の強さが必要になります。
甲出しで足の各関節をゆるめましたが、今度はその足の関節の強さとグラつかない足首、アキレス腱とふくらはぎ、前頸骨筋(スネ)の筋力ができ、トゥで床を刺すようなエネルギーを放出できるとよいです。

☆何度も言いますが、足首だけで立ったら、ふくらはぎと太ももが太くなり、痛める原因にもなりますので、上半身の意識は忘れないでください!

トゥシューズが履ける筋力がついたことの確認方法

まず両手でバーをつかみシッカリ立てるようになったら→今度は片手でバーをつかみトライ→バーから離れて腰をサポートしてもらい立ってみる→一人で立ってみる(ここでグラつかないでシッカリ床を突き刺せたら、立つ為の筋力はOK)→この時に重要なのが足の内側(親指から内くるぶし)までのラインをシッカリと前に向けて張れているかチェックしてください(全ての過程で両足、片足をトライします)これは最低限の確認です。
もちろん色々なパを行うには、片足で立ったり、回ったりもしますので、捻れ等にも強くなる必要があります。
筋力強化には時間は掛かりますので、ちょっと立てたからといって無理にレッスンを進めてしまうと捻挫や足首を痛め、ふくらはぎにも負担がかかり、肉離れの原因にもなりますので、先生の指示に従いレッスンを進めていきましょう!
☆足にだけ意識が集中して上半身を意識できないようなら、まだ筋力は未熟と思った方がよいです。

5番ポジションを綺麗につくるには

人それぞれ足の開き、柔軟性には個人差がありますので、まずは自分の股関節がどこまで開くかチェックをしてください(もちろん柔軟性を高める努力はします)その股関節の最大外旋ポジションに膝の向き、つま先の向きを合わせて、まずは1番ポジションでチェックしてください(6番からつま先を開き1番にした時のポジションが自分の最大ターンアウトのポジションです)次にそのターンアウトした感覚を保ったまま5番ポジションにします。
決して股関節の開き以上に膝やつま先を開かないでください。

能力以上に開いて立ったところでラインは崩れるし、まったく動くこともできません!(開くことより綺麗なラインをつくることの方が大切です)
脚を重ねる時に重要なのが、足の外側は無視してください!(もちろん膝を伸ばせば外側は張りますが)太ももの付け根だけが重なり合うような感覚を意識して、更には尾骨をしまうような感覚があるとよいです。
みなさん足の前面に意識が集中してしまいますが、どちらかというと足の後側を意識できるとよいです。
内側同士で引き寄せる感覚!(外側で押し込まない!)
しかしながら太もものケアーが悪いと、疲労が溜まって緊張が抜けないので、この感覚をつかむのは難しくなります。
だから筋肉のコンディションを保つのはとても大切です。
緊張の抜けない筋肉のままレッスンをしていても、脚は太くなり、上達するのに効率が悪くなりますので、レッスン後のストレッチと定期的なケアーを大切にしましょう!

正しいプリエとは

プリエはそれぞれのポジションから、簡単にいうと膝を曲げていくことですが、大切なことが、下にいく時程、上半身は上への引っぱりを意識することを忘れてはいけません。

立った状態で天井から頭頂部をロープで引っ張られ人体の中を一本の串が貫き、その串からセンターがズレずに上下運動をしているイメージです。

初心者は肩に力が入り、前傾しやすく、お尻が突き出やすく、膝が閉じやすく、小指側に体重が乗りやすいですので、これらの事に注意が必要です。

脚においてはプリエ(特にグランプリエ)をする時は、膝を開いていく(内股を前にする)、かかとを前に突き出す感覚があると股関節が更に開いていきますので、股関節の柔軟性もアップします。
この時プリエから戻す時に、どうしてもINにもどりやすいので、少しでも開いた状態、ターンアウトを回し続けることが重要です。

上半身は引き上げ、背中が後ろにひっくり返るくらいの感覚が、まっすぐな状態です。
みぞおちを締めて背中をプッシュバックすることにより綺麗な背中も作れますので、背中で表現できるようにイメージしながらレッスンをしましょう。

☆脚の間にボールを挟み、そのボールをつぶしていく感覚があるとエネルギーを逃がさなくて強いプリエができますのでイメージしてみてください、実際にボールを挟んでみるとよいです。

バレエのし過ぎで腰痛になった

個人のレベルや状況によって様々な腰痛の原因が考えられますが、初心者にしても上級者にしても引き上げが弱くなり、腰に負担がかかり仙骨や股関節や腰椎に痛みを発生するケースが多いです。
バレエの場合はJAZZやモダンと比べて直線的な動きが多いのですが、直線的な動きだからこそ、同じポイントへの負担が集中してしまいます。
股関節、腰椎、ふくらはぎ、お尻の負担などから椎間板ヘルニア、座骨神経痛、変形性股関節症、筋筋膜性腰痛、仙腸関節の炎症、恥骨結合の炎症、ぎっくり腰などになりやすいので、それを防ぐ為にも、レッスンはストレッチとケアーも含めてレッスンということを認識してください。

痛みの症状が出たら、できるだけ早く治療をした方が、早期回復が見込めます。
「大丈夫!自然に治る」と思い、放っておくと、確かに痛みは消えますが、内側では色々な組織が絡み合い、複雑にねじれて固まりができたりしてることがほとんどです。
その固まりが引き金となって、ぎっくり腰や腰痛などにつながることも多いので、可能な限り綺麗な状態に回復させておくことが重要です。

人間の身体は環境の変化にある程度慣れていく対応能力があるので、痛みにも慣れてしまいますが、限界レベルを超えると痛みとして信号を発してきますので、その信号を素直に受け止め、処置をすることが、いつまでも自分の身体を快適に保ち、パフォーマンスを続けることが可能になりますので、ちゃんと身体の声を聞いてあげてください。